加工技術
物理的・化学的に優れた特性を備える貴金属は、加工に際して高い技術が求められます。
当社では、貴金属の材料設計と並行して、量産に向けた加工技術の開発にも力を入れています。鋳造・鍛造・圧延・熱処理・切削などの各工程で最適な条件を設定し、お客様の要求にあった寸法・形状に仕上げます。
イリジウム合金 ~微細加工・耐熱材加工への挑戦~
自動車のスパークプラグの先端に使われる電極は、非常に微細な部品で、エンジン内の高温で酸化しやすい極限の環境に耐える必要があります。1990年代に入ると、当時主流だった白金電極よりも優れた新材料を求めて、共同開発案件が立ち上がりました。
新材料として最も期待された材料は、耐熱性と耐酸化性に優れるイリジウム合金でした。
しかし、イリジウムのヤング率や硬さは鋼鉄の約3倍以上と高く、塑性加工や切削加工が難しい材料です。そのため、当時、イリジウムを安定的に微細加工することは不可能だと考えられていました。当社は長年にわたり培ってきたノウハウを活かし、イリジウム合金の開発と微細加工、耐熱材加工の技術開発に挑戦しました。
耐熱性に優れるイリジウムは、熱間加工にも特別なノウハウが必要です。
イリジウムを軟化させ変形させるためには、一般的な鋼鉄よりも数百℃も高い温度下で加工を行う必要があります。また、温度が低下すると物性が大きく変化するため、高精度な加工のためには精密な温度管理が必須です。高温の加工に耐える専用の治具や設備も導入しなければなりません。
その他にも技術的な課題は山積みでしたが、当社は数年にわたる試行錯誤の末に、ついに熔解法によるイリジウム合金の微細加工法を確立し、スパークプラグ用電極の量産化を世界で初めて実現させました。
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